漫画『はだしのゲン』

広島と原爆

1945年8月6日、朝、広島にとっても日本にとっても、非常に大き気な出来事が起こりました。
アメリカ軍の爆撃機B29エノラ・ゲイから、原子爆弾「リトルボーイ」が投下されたというものです。
これは人間が初めて核兵器の対象となった瞬間でもあり、同時に日本が唯一の核兵器被爆国となった瞬間でもありました。

この原子爆弾という兵器は、非常に高火力であり、一瞬にして広島を瓦礫へと変えてしまいます。
同時に、ただ破壊力が高いだけではなく、放射線障害という問題を後々へと残していくことになります。
実際、投下から70年を経過した現在においても、「原爆症」とよばれる放射線障害を抱えている人が残っており、「治らない病気」として知られることになりました。
さて、こんな原子爆弾、ないしは放射線のことを描いた作品というのは数えきれない程存在しています。

井伏鱒二の「黒い雨」なども有名ですが、やはり多くの人に知られている原爆作品といえば「はだしのゲン」という漫画を上げることが出来るのではないでしょうか。
この作品は作者である中沢先生が自分自身で体験したことを中心に描いている自伝的内容となっています。
現実とは多少違い脚色されている部分もありますが、大筋としては原爆投下後の広島について描かれた内容となっています。

主人公の小学二年生であるゲンが、原爆投下によって多くの家族や親族、さらには友人を失い、その中でどのように生きていくのか、ということを描いた作品です。
作品としてはいくつかのパートに分類することができ、「原爆投下直後」「終戦後」「市民以後」の3つとなっています。

第二部の問題

はだしのゲンについては、大江健三郎氏によって賞賛されるなど、漫画としてだけではない高い評価を得ている、ということでも知られています。
原子爆弾の被害について知る事ができる、ということで学校図書館などにも並ぶ、数少ない漫画の1つだといえるでしょう。
ただ、このはだしのゲンについては、同時にイデオロギーによる論争を引き起こす作品でもある、ということについては知っておく必要があります。

前半、具体的には「原爆投下直後」と「終戦後」の内容については、それほど問題があるものではありません。
原爆の恐ろしさというものを描いているに終始しており、政治的な批判という内容にはなっていないためです。
しかし、第二部以降については警察予備隊(今の自衛隊)の発足に反対するような内容が描かれているなど、イデオロギー的な表出が見られ、客観性に欠けるということで批判を浴びることも少なくないのです。

はだしのゲンを読む場合には、このことを考えて前半だけを読むというのも1つの方法です。
自身のイデオロギーを見つめなおすために第二部を読むのも良いですが、鵜呑みにしないようにした方がよいでしょう。

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